平成25年度 短答試験

〔13〕商標権の設定登録・移転・存続期間の更新等に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。
 ただし、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しないものとする。

(イ)商標権の存続期間満了の日から6月の期間内に商標権の存続期間の更新登録の申請をすることができなかったことについて、原商標権者に正当な理由がなくても、専用使用権者に正当な理由があり、その理由がなくなった日から2月以内で当該期間経過後6月以内に原商標権者が更新登録の申請をした場合、存続期間は、その満了の時に遡って更新されたものとみなされる。

(ロ)地方公共団体が、その団体を表示する図形からなる標章について受けた商標登録に係る商標権を、譲渡できる場合がある。

(ハ)商標権の設定登録時に登録料を分割して納付した場合、商標権の存続期間は設定の登録の日から5年で満了するとみなされる。

(ニ)防護標章登録に基づく権利を伴っている商標権を指定商品又は指定役務ごとに分割するときは、いかなる場合も防護標章登録に基づく権利は消滅する。

(ホ)商標権の分割は、登録しなければその効力を生じない。

1 1つ   2 2つ   3 3つ   4 4つ   5 5つ


正解 2

(イ)誤り(平成27年改正により問題文を変更する必要あり)
 商21条1項は「前条第四項の規定により消滅したものとみなされた商標権の原商標権者は、同条第三項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内にその申請ができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、その申請をすることができる。」と規定している。
 経済産業省令(商施規10条3項)→正当な理由がなくなった日から2月。ただし、期間の経過後6月まで。
 商21条1項の「正当な理由」とは、原商標権者の「正当な理由」をいう。
 原商標権者に正当な理由がないときは、商21条1項は適用されない。
 本問において「商標権の存続期間満了の日から6月の期間内に商標権の存続期間の更新登録の申請をすることができなかったことについて、原商標権者に正当な理由がなくても、専用使用権者に正当な理由があり、その理由がなくなった日から2月以内で当該期間経過後6月以内に原商標権者が更新登録の申請をした場合、存続期間は、その満了の時に遡って更新されたものとみなされる。」とあるのは、「原商標権者に正当な理由がなくても、…存続期間は、その満了の時に遡って更新されたものとみなされる」とある点で、誤りである。
 よって、本問は、誤りである。

(ロ)正しい
 商24条の2第2項は「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体であつて営利を目的としないものの商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができない。」と規定している。
 地方公共団体が商標権者である場合に、その商標権を譲渡することができないのは、商4条2項に規定するものに係る商標権である場合である。
 地方公共団体の商標権が、商4条2項に規定するものに係る商標権ではない場合には、当該商標権を譲渡することができる。
 本問において「地方公共団体が、その団体を表示する図形からなる標章について受けた商標登録に係る商標権を、譲渡できる場合がある。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ハ)誤り
 商19条1項は「商標権の存続期間は、設定の登録の日から十年をもつて終了する。」と規定している。
 商41条の2第5項は「第一項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料(以下「後期分割登録料」という。)を納付すべき者は、後期分割登録料を納付すべき期間内に後期分割登録料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、その期間の経過後六月以内に後期分割登録料を追納することができる。」と規定している。
 商41条の2第6項は「前項の規定により後期分割登録料を追納することができる期間内に後期分割登録料及び第四十三条第三項の割増登録料の納付がなかつたときは、その商標権は、存続期間の満了前五年の日に遡つて消滅したものとみなす。」と規定している。
 商標権の設定の登録料を分割納付した場合において、後期分割登録料を所定の期間内に納付しなかった場合は、その商標権は、存続期間の満了前5年の日に遡って消滅したものとみなされるのであって、商標権の存続期間が5年となるわけではない。
 本問において「商標権の設定登録時に登録料を分割して納付した場合、商標権の存続期間は設定の登録の日から5年で満了するとみなされる。」とあるのは、「商標権の存続期間は設定の登録の日から5年で満了するとみなされる」とある点で誤りである。
 よって、本問は、誤りである。
(ニ)正しい
 商66条1項は「防護標章登録に基づく権利は、当該商標権を分割したときは、消滅する。」と規定している。
 本問において「防護標章登録に基づく権利を伴っている商標権を指定商品又は指定役務ごとに分割するときは、いかなる場合も防護標章登録に基づく権利は消滅する。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。

(ホ)正しい
 商35条は「特許法第七十三条(共有)、第七十六条(相続人がない場合の特許権の消滅)、第九十七条第一項(放棄)並びに第九十八条第一項第一号及び第二項(登録の効果)の規定は、商標権に準用する。この場合において、同法第九十八条第一項第一号中「移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)」とあるのは、「分割、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)」と読み替えるものとする。」と規定している。
 特98条1項柱書は「次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。」と規定している。
 特98条1項1号は、「特許権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、信託による変更、放棄による消滅又は処分の制限」と規定している。
 本問において「商標権の分割は、登録しなければその効力を生じない。」とあるのは、正しい。
 よって、本問は、正しい。